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レーザ協会 会長挨拶

○○○○○○○○イメージ池野 順一
 所属:埼玉大学大学院理工学研究科
 職位:教授
 専門分野:精密微細加工学(レーザ加工、砥粒加工)
 連絡先:ikeno@mech.saitama-u.ac.jp
     〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保255
 協会:2021年5月 レーザ協会会長就任
 学会:砥粒加工学会(2020−21会長)精密工学会(2016-17出版部会長)
    日本機械学会(2018-2019関東支部表彰部会幹事)
 専門委員会:砥粒加工学会次世代固定砥粒加工プロセス専門委員会(2012-2021委員長)
       精密工学会生産原論専門委員会委員長(2021年1月委員長就任)


 2021 年 5 月の総会で第 10 代会長に就任致しました埼玉大学の池野順一です。創立 50年を迎える年に会長を拝命致しましたことは、誠に光栄なことと存じます。同時にこれまで協会をご支援頂きました多くの会員の皆様、理事の皆様にあらためて敬意を表するとともに深く御礼申し上げます。

 協会は 1972 年に中央大学・島川正憲教授と東芝・小林 昭氏が中心となり組織されたと伝え聞いております。メイマンがレーザ発振に成功してから 12 年後の日本で、レーザ加工装置が上市され、産業界の求めに応じてレーザ加工研究会(レーザ協会の前身)が創設されましたことは、アカデミアの学会とは大きく異なる点であります。日本経済の成長と共に、技術立国として歩み出した日本の勢いづいた時代でありました。高い志を持って日本の発展に貢献され、激動の時代を生き抜いた先人を思うとき、あらためて身の引き締まる思いが致します。

 レーザ発振の成功を伝えるニューヨークタイムズ紙には、さまざまなレーザ応用が記載されておりました。まさにレーザは 20 世紀最大の発明といっても過言ではありません。応用の一つには金属加工の可能性が記されています。ルビーレーザの発振からまもなく、炭酸ガスレーザや YAG レーザといった産業用レーザが開発されると、穴あけ、切断、溶接、表面処理などで威力を発揮し、たちまち産業技術として確固たる地位を築いて行きました。いまやレーザ協会創立時の目的は、十分達成できたと自負しております。

 レーザ技術はその後も多岐に亘って開発が加速し、種々の高性能レーザ発振器が出現しました。お陰で我々は UV から IR までの波長で fs〜ms までのパルス幅の高出力レーザを使用できるようになりました。これに伴って、生産加工分野では新たな可能性が見出され、これまで機械加工でしかできなかったものが、レーザ加工で可能となり、しかも格段に能率よくできるようになったものも多くあります。例えば、電子基板の微細な穴あけ加工では、ほぼレーザ加工に置き換わってしまいました。

 一方、機械加工では不可能だった加工技術の開発も進んでいます。例えば、切り屑を出さずに半導体ウエハを 2 枚に剥離するダイシングやスライシング技術、色素を不要とする表面プラズモンによるカラーマーキング、透明材料内部に微細な流路を直接形成する加工技術、高度な表面機能を効率よく発現させる微細パターニング技術などがあります。協会の創立当初では考えもつかなかった技術です。

 創立から 50 年を経てもなお、レーザ加工は時代の要求に応じ発展を続けており、レーザ協会は益々その存在価値を増して来ております。2022 年からレーザ協会は”これからの50 年”を見据えて新たな一歩を踏み出して参ります。皆様のご理解と温かなご支援を今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。


2022 年 1 月  
埼玉大学大学院理工学研究科教授  池野 順一